サラリーマンを目指さないことには勇気が必要です。
僕小さいころ、祖父の家とかに遊び行ったときいっつも言われてたんですよ。
「良い大学に入って、良い会社に入るんだよ。」
僕の祖父は官僚相手の電気メーカーの取締役で、周りの親戚も大手のサラリーマン
ばかり、いわゆるエリート層な方が多い家系でした。
その中で僕の父だけは自営業でした。
もともと結構やんちゃなタイプな父だったので
若いころはそれなりの大手に勤めていたけれど、上司と喧嘩してブチぎれて独立してやる!!と会社を辞めてしまいました。
僕が生まれて2~3歳の頃のようです。
父は僕を祖父の家に連れていくと、いっつも自分の事を卑下に言っていました。
「親戚一同エリートだけど、俺は落ちこぼれだからしょうがねーさ。なるようにしかならねーもん。」
そんな事を目の前で言っていた父ですが、私生活を見ると
少なくとも駅前で辛そうに改札を抜けていくサラリーマンよりは
よっぽどよい生活をしていました。
朝は僕や妹が出かける頃に起きる。暑い夏の日に僕が学校から帰ってくると、
四畳半の部屋にクーラーをガンガン効かせて、
買ってきたばかりの漫画を読んでいたりしました。
かといって、小さいころお金の面で苦しんだ覚えはありません。
毎月1回は地元では高級な焼き肉屋に連れて行ってもらって、夏には沖縄旅行、
冬には北海道旅行に行って、本当に良い暮らしをさせてもらいました。
小さいころには気づかなかった当たり前の光景が、いま結婚をしてサラリーマンの僕から見ると、いかにすごいことかと感じます。
1つ目のすごさは勇気です。
親戚一同、孫の僕に対して大学や会社の話をする家で育ち、その中から独立をする
というのはどれほどの勇気が必要なのでしょうか。
父がもともと勤めていた会社も今では日本有数の企業ですし、それを辞めて独立を
するという事がどれほど怖いことなのか。ましてやそれが結婚した後で
子供や嫁を食わせるためにどれだけのお金を稼がなきゃいけないと考えていたのか。
その覚悟を持つという事は、簡単にできることではありません。
2つ目のすごさは、稼いでやるという意思と、その実行力です。
洋服の卸業を中心にやっていたのですが、ビジネスの幅は広くショップ、金融、
人材派遣、運送等々とにかく色々なことをやっていたそうです。
もちろん波はあったそうですが独立して一人でやっているにも
関わらず、結果的にそこらのサラリーマンより全然稼いでました。
恥ずかしい話ですが、僕の家は結構ぐちゃぐちゃな家庭です。
両親は別居をして10年が経ちました。その前にも一度別居をしているので
トータル13年くらいは別居しています。
しかしその間、父は子供の為に毎月数十万のお金を渡しています。
おそらく普通のサラリーマン家庭では金銭的に不可能な額ですが
生活費を渡さなかったことは結婚してから1月もなかったそうです。
別居の話は共感できないけど、父は独立してお金をしっかり払って嫁と子供を
食べさせた上に、大学にまで僕を行かせる財力があった。
ここが本当にすごいことだと思ってます。
サラリーマンには固定収入があります。毎月職場に行きさえすれば
お金をきちんともらう事が出来ます。年次を重ねる毎に毎月賃金も
上昇していくし(これは今の時代ちょっと怪しいところはあるけど)
出世する事で一般社会でも地位を得られます。
(あそこのお父さんは●●会社の部長さんなんだよ!みたいな。)
でも通勤も大変だし、上司のストレスは社長にならない限りいつまでたっても
あるし、時の流れを感じやすい職業です。
過ぎるまでは長いけど振り返った時に何をしていたんだろう
という定年近くのサラリーマンの声も何人も聞いてきました。
独立(フリーランス)には固定収入はありません。自分で仕事を探さなければ
ならないし、お金を作る方法を自分で模索しなければいけません。
でも、転勤もないし無理に人間関係を作る必要はない。子供の運動会が平日にあったら
休んでも良いし、単身赴任なんてする必要もありません。
この2つ、よく見てみるとメリット・デメリットが双方あるんですよ。
どっちに転んでも嫌な事はあるし、つらい時期もあると思います。
後はどちらを自分が選択したいかという事です。
残念ながら、このメリットとデメリットを”公平”に眺められない
社会文化が日本にはあります。
「会社名が良ければ安泰だよ。」
「給料がそんなに高くてうらやましい。」
「役職が上がって”出世”したよ。」
このステータス文化からは簡単に抜け出せません。
だから、もし下の道を選ぶなら覚悟が必要です。
周りからどう見られるかじゃない。
失敗した責任をなすりつけるもんじゃない。
最後に必要なのは周りから白い目で見られる勇気と、
絶対に嫁と子供を食わせていくという意思だと、
僕の父の姿を見て思います。