小さいころ、ぼくは祖父に会うたびに言われていた言葉があります。
「良い大学に入って、良い会社に行くんだよ。」
その言葉は、ぼくにとって至極当たり前の言葉でしたが、中学生、高校生になるにつれて、少しずつ感情が変わってきました。
「なんで、あの疲れたサラリーマンのようになることが目標とされるんだろう?」
ぼくは、少しずつ疑問を持ちました。近所を歩いている金髪のお兄ちゃんは毎日すごく楽しそうです。でも、近くの駅でくたっとしているサラリーマンは、いつみても辛そうな表情をしています。
そんな少しの疑問を抱えながらも、最終的にぼくは「良い大学にいくぞ!」と高校2年生の冬に一念発起し、1日10時間以上猛勉強を重ね、晴れて一般社会的に「良い大学」と呼ばれる大学に入学することとなりました。
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大学に入ることでぼくは新しい世界をたくさん知りました。たくさんの人と会い、たくさんの本を読み、たくさんの経験をしていきました。
なかでもぼくが一番大きな影響を受けた言葉は「大企業や公務員”だけ”が正解じゃない。」という言葉でした。
今日はその話をしていこうと思います。
Contents
大学生が目指すゴールは大企業か公務員、それ以外は負け組
ぼくが大学に入学したときの話をしましょう。
入学した後に学校がぼくに与えた選択肢は「マスコミ養成」「公務員養成」「公認会計士養成」等、すべてが将来大学を卒業した時のことを考えたものでした。
「部活に入った方が就職の際有利だから」と言って部活に入る人間や、早期からインターンをした方が就職に有利だからと言って話をしてくる会社の人もたくさんいました。
実際、大学は就職実績を提示します。一部上場企業、国家公務員等、誰もがわかりやすい共通の物差しを使って実績をアピールする文化は、どの大学も変わりません。
ぼくが入学して初めて感じた感想は、「祖父と同じ教えだな。」ということでした。
良い大学に入ることで、良い会社に入ることが出来る。それが世の中にとって共通の正義であり、だから大学に入るべきなんだ。
メーカー?商社?食品?業界は関係なく、ただその名前は「みんなが知っていること」であり、それだけが価値である。
これがぼくが大学に入学して得た最初の結論でした。
ある作家との出会いで、強烈な衝動を抱えた。
大学は就職に有利と言われても、後4年も先のこと。
この時にぼくが選べる選択肢は、ただ遊ぶことでした。サークルに入って女を作る。バイトをして金を稼ぐ。授業をさぼって引きこもる。初めての人生の自由時間。ぼくの中にある選択肢はとっても貧しく、面白くないものでした。
ぼくはこの4年間という貴重な時間をどう過ごしたら良いかわからなかったんです。
このまま何かせずとも、なんとなく就職ランキングを見て、真面目に受け答えすれば、それなりに大手と呼ばれる会社に入れるだろう。
でも、それが本当に正解なのだろうか?ぼくは何のために勉強したのだろうか?幼いころに駅で見た、あのくたびれたサラリーマンと同じ様になることが正解だとどうしても思えなかった。
ぼくはこのままでは4年後の卒業式で、確実に後悔する。
何かしなくてはならない。ぼくは何かしらの”答え”を見つけなければならない。
そんな思いを裏に日々を過ごしていた時に、ぼくは彼と出会いました。
学生の目線から、学生たちに、答えを提示してみてよ。
その場は、ある新入生向けの授業のオリエンテーションでした。
その彼は20代でベストセラーを数冊出したある作家さんで、聞くところによると、とあるきっかけでぼくが通う大学と契約を結び、低学年向けのキャリア教育を請け負ったという事した。
彼がぼくたちに向けて話したスピーチは、ぼくが感じていた違和感そのものでした。
何故、大企業と公務員だけが選択肢なのか?
大学の4年間という時間にもっと有益な時間は提供できないのだろうか?
サークルとバイトと恋愛だけが、やるべきことなのだろうか?
ぼくの心の中で、小さく絡まっていた複雑な思いを、彼は鮮明に言葉にしていました。
その講義の後、ぼくは強い衝動に駆られ、彼の元に行き必死にアピールしました。
まったく同じことを思って過ごしていた事、ぼくの生い立ち、努力、何が正解なのか分からないけど、至極共感していることを支離滅裂に話しました。
一通りぼくが話し終えた後、彼はこう言いました。
「だったら、この1年間でぼくと一緒にその答えを示してみようよ。」
こうしてぼくは4年後に胸を張って卒業できた。
それから大学を卒業するまで、ぼくはその人と同じ様に有志で集まった仲間と、たくさんのことを企画しました。
大企業や公務員が正解というけれど、今世の中で楽しく暮らしている人は本当にそうなの?
じゃあミュージシャンは?職人は?映画監督は?みんながみんな大手に入ったことあるの?
じゃあ大手にいる人は?本当に幸せなの?
たくさんの疑問を胸に、色々な人を探し、コンタクトを取って話を聞き、その人たちを大学に呼び、講義してもらい、その内容をメディアでまとめ、発信していきました。
こうした経験から、ぼくは「未来の働き方の研究」や、「好きなことをしている人にインタビュー」等様々なことをやるようになり、卒業後人材業界に入社をする事となりました。
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ぼくが彼と一緒に探して出した答えの一つは、「人と違って良い。」ということでした。
大企業や公務員で勤めることが幸せな人もいる。
大学を辞めて起業することが幸せな人もいる。
田舎でのんびり暮らすことが幸せな人もいる。
そこに優劣をつけたり、批判することは本来行うべきことじゃない。
生き方を逆算し、自分は何が欲しくて、何を捨てられるのかを考える。
最も欲しいものが手に入る場所こそ、自分にとっての正解の場所であり、ゴールである。
だから、世間一般で言われているゴールだけを見なくても良いんだよ。
この4年間の経験は、ぼくにこうした気づきを与えてくれました。
今、ぼくが大学生活を過ごしていた頃よりも、少しだけ時は流れて、従来当たり前だった価値観に疑問を投げかける声も増えてきました。
新卒フリーランスという選択肢や、副業や起業という選択肢という、一部の人間しかやらなかった選択肢も少しずつ一般化しています。
大企業というシステムは人口動態やテクノロジーの進化により少しずつ欠陥を見せてきています。もしかしたら数年後には、「フリーランスになることが正解」になるかもしれません。
そんな時がきた時にこそ、ぼくはあえて中立であり続けたいと思っています。
それはきっと、フリーランスになること”だけ”もまた正解じゃないのだから。